在宅医療

 ≫読売新聞 病院の実力 ~滋賀編 2011.3.6

    

◎近いほど対応細やか 在宅医療 

 在宅医療は、日時を決めて定期的に医師が訪れる「訪問診療」と、急変事に患者宅の要請に応じて昼夜問わず駆けつける「往診」がある。
 在宅医療は主に、全国に約1万2000か所ある在宅療養支援診療所の開業医が支える。ただ、中には日ごろ診ている通院患者が在宅に移行した時にだけ対応する診療所も多く、実態を把握するのは難しい。
 今回の調査では、インターネットなどで、在宅患者を診ていることを確認できた896施設を抽出。昨年12月にアンケートを送付し、463施設(52%)から有効回答を得た。

病院の実力「在宅医療」

 表には、受け持ち在宅患者数、昨年4~6月の往診回数、2009年7月からの1年間に自宅(高齢者専用賃貸住宅、グループホームは含まない)で看取った患者数を示した。受け持ち患者数は、各施設が訪問診療に割く時間によって決まる。自宅での看取りの数は、末期がん患者を多く診る施設多い傾向にある。
 在宅医療を希望する場合、医療機関を探す時の最大のポイントは、自宅が往診可能な範囲にあるかどうかだ。一般的に自宅に近いほど、こまめな対応をとってもらいやすい。まずは近くの医療機関に対応可能かどうか、相談してみるのが良い。   


◎人生に寄り添い支える

 65歳以上の割合を示す高齢化率が約30%の東近江市永源寺地区で、在宅医療に取り組む市永源寺診療所(山上町)の花戸貴司所長(40)に話を聞いた。
(山下陽太郎)

永源寺診療所所長


 『私が着任した2000年、在宅医療を受ける患者さんは7人でしたが、現在は60~70人。「病気になっても、住み慣れた家にいたい」という希望は増えており、穏やかに過ごせるように支えることを心がけています。
 訪問診療は一人あたり月1、2回です。人工呼吸器の管理や点滴などのほか、採血や注射もします。往診では切り傷を縫合することもあります。どちらも、レントゲン撮影や手術以外、診療所での診察、治療と変わりはありません。
 赴任当初、余命わずかの男性に懸命に治療を施していた時、奥さんに「先生、もうあかんなあ」と言われ、衝撃を受けました。家族は死を受け入れているのに、医療で何とかしようとしていることに気付きました。
 過度の治療は、患者さんの生活を束縛し、自由を奪います。それよりも、最後まで生き生きと過ごしてもらえるよう、安心を提供するべきなのでは、と思うようになりました。
 自宅を訪ねると、生活環境など様々なことがわかります。老々介護で疲れきっている家族に、ねぎらいのことばをかけてあげることもできます。
 医療は生活を支える一部でしかありません。患者さんの人生に寄り添って生活を支えることが、「在宅医療」だと考えています。』