患者の診療情報、全国で共有… ネットワーク構築
≫読売新聞 医療ニュース:yomiDr. 2013.8.05
厚生労働省は、患者の治療歴や処方薬などの診療情報を病院・診療所で共有するネットワークの構築に乗り出す。
医療機関で広く普及しているレセプトコンピューターを使い、全国の医療機関などで情報の閲覧が可能となる。データの共有化で、転院や在宅療養への移行がスムーズになり、患者の利便性の向上や健康増進につなげる狙いがある。2018年度までの展開を目指す。
レセプトコンピューター(レセコン)は、医療機関や調剤薬局が医療費請求に使う情報端末。診療報酬明細書(レセプト)作成ソフトを搭載している。国内の病院・診療所の約8割にあたる約8万9000施設が保有し、患者名、病名、手術や治療法、処方薬などのデータを入力している。
厚労省によると、まず地域で病院、診療所、薬局がネットワークを構成し、参加施設は患者の同意を得た上で、レセコンのデータの一部をネット上に登録。患者の治療を引き継いだ別の医療機関の医師などが、必要に応じて治療歴や処方薬などを閲覧できる。地域単位のネットワークを結べば全国での情報の共有が可能になる。
個人情報保護のルール必要
厚生労働省が新しいネットワークでレセプトコンピューターを使うのは、病院、診療所で最も普及している情報端末だからだ。多くの施設の参加が見込まれ、これまで思うように進んでいなかった医療機関の情報連携が一気に進む可能性がある。
登録された個人の診療情報は、集積すれば、膨大な「ビッグデータ」となる。
感染症の発症頻度や処方薬の使用状況の把握などに役立つほか、機動的な医療政策の立案にもつながる。
しかし、診療情報はプライバシーそのものだ。遺伝性の病気は患者の家族にも関係する。現行の個人情報保護法は個人情報を第三者に提供する場合、本人の同意で可能となるが、こうしたケースでは扱いが難しい。同意は本人だけでいいのか、議論の余地がある。
だれが情報にアクセスできるかも含めて、診療情報の保護と利用についての明確なルールが必要だ。 (医療部 渡辺理雄)