きっかけは7~8年程前、訪問先の患者さんのご家族からの相談でした。患者さんは認知症を患われており元々持っている服はブラウスが多くボタンを引きちぎられる事が多くなったとの事でした。ある日「ボタンを口に持っていくなどの危険性を回避するためにチャックの服などはないですか?」と尋ねられました。インターネットで介護用品の中から幾つか見つけ出しましたが、なかなか適切な商品が見つかりませんでした。そして最終的に某ショップのフリースを見せたのですが、その姿をみたご家族が「お母さんらしくないなぁ」と呟かれました。私はこの一言がとても気になりました。実はその患者さんはとてもおしゃれな方で衣服にとても気を使う方だったのです。どんな状況でも大切にされているアイデンティティを表現することはQOL向上につながります。施術だけの関わりだけでなくこの患者さんに対して他に何か出来る事はないかと考えました。そしてご家族の意見を参考にして自らが作ってみようと思いついたのです。ここで一つ現場の声として感じていたことがありました。それは作成作業に本人も参加するということです。本人が現場で感じている生の声を直接聞いてこそ良い品物ができると考えて協力を依頼しました。デザインは春~夏のブラウスで薄紫色の花柄が好きとの事。素材は肌に優しい綿を希望されていて地場産業である高島ちぢみを使用。着脱時のストレスはアームホールを広げることで軽減。デイサービスでは空調がよく効いているので肘を冷やさないように七分袖。腰が曲がっているので後ろ身頃を長くしてトイレやベッドの移動時などには布で作ったモチーフに引っ掛けてまくり上げられるようにブラウスの内部に紐を装着。ボタンは隠しボタンで対応。以上のご希望を再現するためにクラウドファンディングにより資金を募ると共に、ブラウス製作のきっかけになった介護現場での体験をシェアしてくださいました。製作については関わったことのない分野ですので大変なことも多くありました。しかし患者さんのご家族が「声をあげたことで色々な繋がりを感じることもできた。相談して本当によかった。」とおっしゃってくださいました。勇気を出して行動に移したことが今となっては本当によかったと感じています。
甲賀湖南師会会員 平木愛
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